第13回【おまえに支えてもらったことは一度もなかった】
離婚に対する子どもへの罪悪感や葛藤は、子ども自身の言葉が解決へと導いてくれた。
成人はしていないもののすでに自分の意思や考えを持つ年齢だった我が子には、なるべく傷付けないようにと伝え方に迷いつつも、ある程度は真実を告げた。
どう反応するだろう、きっと傷付くだろうと不安になっている私を見て、我が子はこう言った。
「え、お父さんキモ笑」
続けて
「お母さんさ、もっと自分の幸せを考えなよ。そりゃあ離婚するのはショックだし、そうならないのが一番ではあるけど、でもこっち(子ども)のために我慢して、ご飯もろくに食べれないお母さんを見てる方がよっぽど苦しいよ。それってさ、間接的にお母さんを苦しめてることになるんだよ」
あぁ
そうか
‥いや、そうだよね
私は多分、その言葉が欲しかったんだと思う。
相談していた友達にも同じことを言われていた。
(そうだといいな‥)
そう願いつつも、まだ自分の子どもがそこまで精神的に大人になれている気がしていなかった。
それでもきっと、ほんとは傷ついたと思う。私のために無理もしたと思う。
「ありがとう。ごめんね。」
そう伝えると、
「全然謝んなくていいよ笑」
そう言われた。
自分が思う以上に成長していた我が子の言葉に背中を押され、私は二度目の離婚を決意した。
彼は子どもの前では決して私を悪く言ったりけなしたりする人ではなかった。
その代わり、子どもがいない時間は私にとっては地獄だった。
離婚の話が進み出してからは、お金の話や今後の話をすることが多かった。
が、彼は毎回浮気の理由も離婚の原因も私にあると言って責任逃れをした。
口調が優しい時であっても、私が強く出ようとしたものなら急に態度を変える。
お金の話をしようとしても、とにかく私の要求を受け入れず、私をバカにしたような言い方で理不尽な『彼の正論』をぶつけてきた。
法律がどうこう、そんな慰謝料は普通は発生しない、そもそもお前の考えはおかしい。
口げんかが得意ではない私は、とにかくずっと、彼の理不尽な言葉に言い返すこともできず泣き寝入りすることしかできなかった。
そして、すでに崩壊しかけていた私の心を最終的にえぐり取ったのは、この言葉だった。
「俺は結婚してからおまえに支えてもらったことは一度もなかった」
私が他人を心の底から憎いと思ったのは多分これが生まれて初めてだったと思う。
この人は、自分の立場を守るためなら私の心が壊れることなんてどうってことない。
健康な体でいられるようにって栄養バランスを考えて毎日作ったお弁当は?
帰ってきたときに少しでもキレイな家で休んでもらおうと毎日頑張った掃除は?
仕事の悩みを聞いたあとに「ぷりちゃんのアドバイス通りにやったら上手くいった」っていったあれは?
私はずっと、家族を支えることにしか、時間を使ってこなかったんだよ‥
もしそれが心から思っている言葉なら、私がこの人のために費やした時間は自己満でしかなかったってことかな。
(ああ、もうダメだ‥)
その瞬間から、私は彼と会話をすることすら怖くなった。
もうこれ以上、責められるのも、否定されるのも、耐えられる自信がない。
私はこれをきっかけに、離婚が進んでからの彼の言動と行動を両親に伝え、これから先のお金の話や手続きについて彼と話して欲しいと父に頭を下げた。
本当はもう自分の親には迷惑をかけたくなかったし、自分でなんとかしようと思ってたんだけど。でも、もう自分だけじゃどうにもできなかった。
まー両親には、なんでそんなになるまで言わなかったのかと怒られたんだけど笑
父が彼と話を進めるようになってからは、全てがスムーズに進んだ。
理不尽に言い返されていたお金の話も、その後の話も、彼が父に『彼の正論』を並べ立てることは一切なく、ほぼ私の思い通りになった。
どれだけ私は舐められているのかと苛立ちが募ったが、父に頭が上がらず謝ってばかりの彼を見て、いかに口だけだったのか、いい気味だとも思った。
彼の不倫相手については会社の部下だったようだけど(しかも自分の子どもとそんなに変わらない女の子、キモ)、今後関係を続けないことと、私への多めの慰謝料、子どもへの養育費を条件に会社にもバラさず、彼女にも慰謝料請求せずで手を打った。
というかむしろ別れるきっかけを探してたら向こうから慰謝料ぶら下げてきてくれたわけだから(ブラックぷりっちー発動)、離婚後に付き合ってようがどうだろうが、前回同様どうでもよかった。
ちなみに彼の両親は離婚について口を出してくることは全くなく、なんなら離婚が決まってからも一切会うことも会話をすることも、私に謝ることもないまま縁を切った。
実際バツイチの私を散々けなして、結果自分の息子が不倫して離婚とか、自分なら恥ずかしくて顔合わせられないよね。バカみたい。←ブラック継続中
こうして長かった二度目の結婚生活を経て、晴れて(?)バツ2となった私だが、そもそもダメ男を引き寄せる私のこと、当然これで終わることはないわけで。
むしろ彼から新たに植えつけられた劣等感は簡単に消えるわけもなく、そのおかげで私のダメ男遍歴はここからさらに拍車がかかる。
(ここまできたらもう趣味だと思ったほうがいい)←幸せになれる気がしない