第9回【鬼嫁】
彼と付き合ってからは、運よくファーストフード店で採用してもらい昼の仕事にシフトチェンジした。
彼は相変わらず私や子どもへの気遣いを忘れず、今まで彼氏やダンナに遠慮して言いたいことを言えなかった私を変化させてくれた。
なんでも受け入れてくれる彼の態度に、私も次第に言いたいことを遠慮せず言うようになった。
もちろん、気遣いと思いやりと彼への愛情は忘れずにね。
再婚の決め手となったのは、私がこの先もう子どもを作る気がなく、今いる我が子を何より大切に生きていくつもりだと言う、若い彼にとっては酷でもあるその言葉を嫌な顔せず当然のように受け入れてくれたことだった。
もちろん子どもも彼には懐いていたし。
それから私は自分のわがままを受け入れてくれた彼に甘え、結婚生活を始めた。
当時唯一私を苦しめたのは彼の母親。
バツイチ子持ちの女性にとにかく偏見のある人だった。
何かにつけて私を『お金目当て』と決めつけた発言をし、「子どももいるのに離婚するなんて、どうせ性格に問題があるんでしょう」ととにかく見下した発言を私の親に対しても平気で言ってくる人だった。
彼がそんな義母に強く何かを言ってくれることはなかったが、自分を受け入れてくれた彼には感謝していたので、母の日や父の日はもちろん、誕生日やクリスマスにも自分の親以上に気を遣ってプレゼントやお礼の手紙を送った。(まぁ送らないと嫌味も言われるしw)
義母の私に対する偏見は、いつしか子どもや親にも向きはじめた。
自分のことを言われる分には我慢するが(ムカつくけど)、私の分身である子どもや大事に育ててくれた親のことを悪く言われるのは許せない。
さすがに彼になんとかして欲しいとお願いしたが、
「母さんも悪気があるわけではないと思うんだよね。昔からあー言う人だから‥.」
(いやいや、悪気もなく偏見で他人の悪口言っちゃうならそっちの方が問題でしょう‥)
そう言いたいのをグッと堪えて、さすがに子どもと親の悪口は受け入れられないと訴えると、彼は渋々義母に電話をしてやめて欲しいと伝えてくれた。
そこからだ、義母の中で私が『鬼嫁』になったのは。
私や親に直接何かを言ってくることは減ったが、何か気に入らないことを見つけると彼や義父にあの人は鬼嫁だのなんだのって文句を言うようになった。
はたはた疲れ果てたが、幸い同居しているわけでもない。私たちは私たちで幸せな生活をしようと、出来る限り気にしないようにした。
彼は私に対しても何かを強く言ってくるタイプではなかったので、私はやりたいように、言いたいことはあまり我慢せず、なるべく義母のことは考えずストレスの少ない結婚生活を送った。
もちろん『鬼嫁』と言われるのは悔しかったので、彼が職場の人間関係で悩んでいれば相談に乗り、太ったと言えば食事に気を使ったり、彼のストレスも出来る限り最小限にし支えてあげられるよう心がけた。(はい、負けず嫌い発進w)
それから数年、義母の『鬼嫁』認定にも負けず、私はそれなりに幸せな毎日を過ごしていた。
‥はずだったが、それを覆したのは予想もしていなかった彼の変貌ぶりだった。