第10回【異常】

それなりに幸せな生活を過ごしていたある日、彼は急に私に携帯を見せて欲しいと言ってきた。

私:ん?急にどしたの?
彼:いいから
私:いや別にいいけど‥

唐突で驚いたが、特に見られて困ることもなかったので彼に携帯を渡した。
あんまりいい気はしないけど。

携帯をチェックする彼が私に差し出してきた画面には、地元の後輩とのLINEのやりとりがあった。

彼:誰これ。男だよね。
私:え?地元の後輩だけど
彼:会うつもりなの?

いやいやいやいや、会うも何も住んでるとこめっちゃ遠いし。
地元の友達のことで久しぶりに連絡があって、そのうちまた飲みに行こうね~っていう会話はあるけど、どう見てもよくある社交辞令‥

私:いや、別にないけどw これ社交辞令だしw
彼:ふーん‥。俺、ぷりちゃんが前のダンナさんのときに女関係で苦しんだの聞いてたし、自分の女友達の連絡先全部消したんだけど。なんでぷりちゃんは男と連絡取ってんの?
私:あ、そう言ってたよね!今回友達のことで連絡あってさ、共通の友達にLINE聞いたみたいで!ごめんね!でも何もやましいことのない友達なら、今回の私みたいに異性でも連絡することあっても大丈夫だよ?
彼:は?今更何言ってんの?俺は嫌なんだって!男と連絡取ってんじゃねーよ!
私:いや、そんなつもりじゃなくて。ごめんね、気をつけるね。
彼:‥わかってくれればいいんだけど。‥‥強く言っちゃってごめんね?

今まで見たことのなかった強い口調に、ちょっと恐怖すら感じた。
と同時に、うっすらと高校の時の彼を思い出した。※第1回参照

てかさ、なんで急にそんなこと言ってきたんだろう。
もしかして定期的に私の携帯チェックしてた‥?

(でも、やっぱり私が悪いのかな‥。もっと彼の気持ちわかってあげないとな‥)
私の中でちょっとした不信感が生まれたと同時に、自分を責める悪い癖が出始めた。
そうえいばそれまでは確かに彼以外の男性とはたとえ友達であっても連絡を取ることはなかったかもしれない。
多分、自分が前のダンナの不倫で苦しんだことで、無意識に自分が相手に誤解を与えるようなことは避けていたのだろう。

私もここまで、あまり何も言わない彼に甘えて好きにやってきたし、子どものことは大事にしてくれる、もっと気を使わないとな。
そう思った。

それ以来、彼は様子は少しずつ変わった。
一度本来の姿?を晒したことがきっかけになったのか、私への異常な執着というか、束縛が始まった。

私が外出するときは(当時は専業主婦)いつ、誰と、どこにいくのか、全て連絡するよう言われた。それが近所のスーパーであっても。
そして誰かと会う場合は相手が本当に女性なのかを確認するためにLINEのやりとりを見せて欲しいといい、場合によっては女性と一緒にいる証拠として写メすら強要した。

私は、どんどん異常になっていく彼の言動に疲れてきていたが、
(浮気されて裏切られるよりまし。いらないって言われるよりよっぽどまし。それだけ必要とされてるってことだよね。愛されてるってことだよね。)
そう言い聞かせて、なるべく彼が不安にならないように行動した。

そしてこの頃になると、彼は異性以外のところでも威圧的な言葉を投げつけてくるようになった。
「ぷりちゃんは八方美人だから外に出てもきっと嫌われちゃうと思うよ」
「俺はぷりちゃんのことわかってるから、どんなぷりちゃんも受け入れるよ」
「きっと今から外で仕事しようと思っても、ぷりちゃんの性格じゃ続かないだろうね笑」

(あ、そっか、私の性格は彼以外には受け入れてもらえないんだ。確かに前のダンナも浮気したもんね。親だって、小さい頃私のことわかってくれなかった。彼の母親だって‥)

口調は優しいけど、今でいう『モラハラ』ってやつかな。
私は見事に洗脳された。

彼の束縛は日に日に激しくなり、
「家の駐車場にバイクのタイヤの跡があるけど誰か来たの?」
「車のタイヤに泥がついてるけどいつもと違うところ行った?」
「ガソリンの減りが早い気がするんだけどどうして?」

等々、私が全く記憶にないようなことまで聞いてくるようになった。
(バイクのタイヤ‥?ほんとにあるなら逆に怖いんだけど‥)←結局何かわからなかった

ここまでくるともう、私が気をつけるとかそう言う問題ではない。
毎日のように何のことかわからない、答えようのないことで疑われ、答えに詰まると更に疑われる。
逃げ出したいと思っても、外に出て人に嫌われるのが怖い。

そんな毎日の中、いつしか私は、心の病気になった。

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