第43回【私史上最低最悪なクズ~感情編~】

結局、彼はウチでの用事を済ませた後も、そのまま家にいた。

何度か、
私:いつ家に戻るの?
彼:いつにしよう。
こんな会話が交わされたけど、結局数日滞在。

こうなってくると、もう前とおんなじ。一緒にいれば、情も戻ってきちゃう。

だから嫌だったんだよ。
家に来たらこうなっちゃうんだよ。

あんなに辛い思いをして、ようやく吹っ切って、気持ちを断ち切ったのに。
心から嫌いと思えたのに。

Kは何を思ってここにいるの?
なんで苦しんでることに気づかないの?

私:ねぇ、うちらどうすんの?別れるんだよね?
彼:どうしようね。

何それ。何それ。腹立つ。こっち来ちゃえば思い通り?作戦成功な感じ?

私:私はもう嫌なんだよ。もう二度とあんな思いしたくないんだよ。
彼:わかってる。
私:わかってないよ。もう許せないんだよ。
彼:裏切ってほんとにごめんなさい。

いや違うよ。どうしてそんなこと言うの?
そんなこと言う人じゃないよね?
なんで今更そんなこと言うの?
なんで今まで欲しかったことを今言うの?

私:またおんなじことするよね?
彼:しない。
私:いや、するよ。私が嫌なこといっぱいするよ。
彼:‥じゃあ嫌なこと全部言って。
私:何それ。言ってどうなんの?
彼:それをやらないように努力する。
私:努力って何?どうせ努力したけどだめでしたってなるよね?
彼:‥その時は‥切腹する。
私:はぁ⁈絶対しないじゃん。
彼:ふっ


だめだだめだだめだ。
彼のペースだ。ずるい。悔しい。腹がたつ。



今までどんなに喧嘩しても自己中で謝らなかった人間が、そして私の話なんて全く聞く耳持たなかった人間が、今自分に発している言葉がいったいなんなのか。

例えば警察から彼自身を守るために、今までのプライド捨ててまでそこまで言える人間なのか。

   いや、バカだから咄嗟に誤魔化しの言葉は出ることあるけど、私が知る限り自分を守るためだけに不利益被ってまで私の言うことを聞くタイプではない。

実際さ、別れた方が、他の女の子達と前みたいに一緒に遊べるんだよ?
めんどくさくてウザい彼女がいなくなるわけだし、どっちかというとそういうのを一番に優先するタイプだよね?

   うん、ほんとそうなんだよ。

それともいなくなって私の存在の大きさに気づいた?

   いや、正直それもちょっと信用できない。

とりあえず上手いこと言ってでもいったん繋ぎ止めておきたい?

   あぁ、有り得なくもないけど、『私の嫌なことはしない』なんて不利益被ることまで言う必要ないよね。


‥なんなの?
人ってこんなに変わるもん?
変われるとしたら、そこには何があるの?
何かに気づいたの?

‥いや、どうあれ、クズはクズ。
そんなにすぐ変わるわけないし、私がそこまで影響力を与える存在だなんて自信もない。

私の知っている彼とはまるで別人のような態度の彼は、果たして本物なのか。
それとも一時的なものでやっぱり騙されてるのか。


いや待って、思い出せ私!
彼に何された?どんな思いさせられた?どんだけ苦しんだ?

‥‥‥
‥‥‥

‥だめだ。だめだ私は。

私はこのとき、また傷つくだろうことを覚悟の上で、「それ」が本物なのかどうかを見極める時間を自分に与えてみたくなってしまった。

信じたわけでもなければ、許したわけでもない。
でも、私史上最悪のクズが、本当にこのまま変わるのかどうか、それを見たいと思ってしまった。

ダメ男ダメ男って言ってるけど、私が一番ダメ女。笑

私、このまま幸せになれないのかな。

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