第1回【周りは見えない】

思えば、私のダメ男人生は高校生の時から始まっていた。

生まれて初めてできた彼氏は2個上で、部活の先輩。
ちょっとオラオラ系で、思いの外ヤキモチ焼きだった。
基本的にはいつも私に優しいけど、気に入らないことがあると急に口調が変わるタイプ。

彼と一緒の部活はというと、一年中休みなし、週末も夏・冬休みも毎日練習。
だけど学校行事前は、自分のクラスの役割によっては放課後ちょっと部活に遅れていくのはよくあることだった。

同級生(男)A:ぷりちゃーん(私)、ごめんこっち手伝って~
私:今いくー!
同級生(男)B:これってこっちの方がよくね?
私:確かにそうかも!こっちでいこ!

こんな感じでクラスのみんなで和気あいあいと準備を進めていた。

同級生(女):ねぇ、あれ3年だよね?こっちずっと睨んでるんだけど
同級生(男)A:あれぷりちゃんの彼氏じゃね?
私:えっ

振り向くと、教室には入ってこないものの廊下から腕を組んでこっちを睨みつけている彼‥

(あぁやばい‥)

何をしたわけではないが、何となく不穏な空気を感じとった私は廊下にいる彼のもとへ駆け寄った。

私:どうしたの‥?
彼:あ?お前なに部活にも来ないで男と遊んでんの?
私:いや、ごめんクラスの準備間に合ってなくて‥遊んでたわけじゃ‥
彼:お前ふざけんなよ!男と楽しそうにしてんじゃねーか!

彼は廊下や教室に私のクラスメイトや他の生徒がいるのも全く気にせず私の胸ぐらを掴み、

彼:俺以外の男と話してんじゃねーぞ。今すぐ部活こいや。

そう静かに言って手を離した。

私:わかった。ごめん。みんなに言ってくる‥

私は初めてのことに恐怖で、そう答えるのが精一杯だった。
教室で様子を見ていた同級生も、3年である彼のその行動に圧倒され、口々に「ごめんね、早くいきな」と言ってくれた。

(みんなが謝るようなことなんて何もしてないのに、私のせいで嫌な空気にしてごめん‥)

一緒に作業をしていた同級生への申し訳なさと、彼への恐怖心でとにかく急いで部活に行った。

部活の先輩:あいつ、イラついてると思ったらぷりちゃんとこ行ったの?いや周り見えてなさすぎでしょ‥。あいつああいうとこあるから気をつけな。
私:はい‥すみません
部活の先輩:いや、ぷりちゃんが謝ることじゃないよ。この時期みんな遅れてくるんだし。ただあいつが個人的にぷりちゃんが男と話してるの嫌だっただけでしょ。

彼:お、やっときた!さあ練習しよ~。さっきごめんね?でもぷりちゃんも変な男寄ってくると困るでしょ?それにほら、こっちも練習しなきゃだしねっ!
部活の先輩・私:‥‥

さっきとは180度違う口調と態度に、私は戸惑いながらも正直ほっとした。
部活の先輩は呆れているようで、彼には何も言わずに練習に戻っていった。

次の日以降、状況を知っている同級生や他の先輩たちに「あの人はやめた方がいい」と散々忠告され、元々恋に恋する程度の気持ちしかなかった私は、他の先輩に付き添ってもらってなんとか彼と別れることができた。
ちょっと渋ったものの、意外と彼もあっさり受け入れてくれたことに、私はちょっと寂しいような、ほっとしたような、複雑な気分だったのを覚えている。



これが私の記憶にある、たぶん人生最初のダメ男。

てか当時は気付かなかった(というかその言葉自体を知らなかった)けど、今思うとどう考えても彼DV気質よね笑

おとなの婚活パーティーOTOCON