第7回【あんたなんかいらない】

赤い車で向かった「今カノ」のアパートの駐車場には、彼女の言うとおり彼の車があった。
その時点で私の気持ちはもう離婚まっしぐらだったので、傷ついている彼女には申し訳ないがちょっとワクワクしていた。

私:どうする?私とりあえずチャイム押してみるけど
女の子:私も行きます!

すでに調べ上げられていた「今カノ」の部屋の前に二人で行き、バレないように覗き穴を塞いでチャイムを何度か押した。
でも残念ながらいくら待っても人が出てくる様子はなかった。

(駐車場の赤い車も目立つっちゃ目立つし、もしかしたら窓から見えてバレたかな‥)

そんなことも思い、とりあえず車は確認したってことでその場での突入は諦めることにした。

彼女はまだ彼に未練があるようだったが、私はとにかく証拠を掴んだことが大きかったので、彼女から慰謝料は取らない代わりにもしも彼がこの期に及んでしらばっくれた場合はうちに来て証言して欲しいと約束し、この日は解散した。

(さぁ、どうしようかな)

ここまでくると、ここから先は彼をどう追い詰めてやろうか、そのことだけを考えた。
今日もこのあと家には夕食を食べにだけ帰ってくる。

彼の性格や口の上手さは熟知している。私一人だとどう言い訳して誤魔化してくるかわからない。
そう思った私は、その日は何事もないかのようにいつも通りに接し(私が今カノの家に行ったのは気付いていない様子)、彼が帰ったタイミングで自分の親と彼の親に電話で全てを話し、離婚の意思を伝えた。
当然驚かれたし、心配もされたが、事態を重くみた両親たちは次の日には仕事を休んで遠くから来てくれた。(ありがたいなぁ)

私は、彼の逃げ場を完全になくし、私と両家の親とで直接追い詰めることにしたのだ。

そしてその日も当然、何も知らずに彼は夕食を食べるつもりで家に帰ってきた。

彼:え⁉︎ど、どうしたの⁉︎

ふ、予想通りのリアクションw

義父:お前、俺らやぷりちゃんに言わなきゃならないことないか。
彼:え?何⁉︎何が⁉︎

状況を飲み込めない彼は、当然しどろもどろ。
私は昨日あった出来事を彼と両親の前であらためて全て話し、状況説明を求めた。

彼は話を聞くと、ようやく状況を把握し、うなだれた様子で口を開いた。

彼:すみません。その女性と関係があったのは事実です‥。でも、もう一人の女性のことは知りません。

あ、なるほどね、実際にきた「元カノ」のことは認めざるを得ないけど、もう一人の方は車しか証拠がないから知らないフリしようってことね。
この男この状況でも少しでも言い逃れしようとか、もう、どうしようないクズだな。

私:じゃあなんで車あったんだろうね。部屋の番号もわかってるけど。
彼:知らない。その近くに友達が住んでるから駐車場借りたんじゃない?
私:じゃない‥?自分のことなのに、「じゃない?」って何?笑
彼:とにかくそんな女は知らない。
義父:‥‥まぁとにかく、そっちの女性はどうあれ、昨日の女性とは付き合ってたってことで間違いないんだな?

(いやいや、どうあれじゃねーよ。逃げ道作ってんじゃねーよ‥)

とことん追い詰めてやりたい気持ちは強かったが、逃げ道を作ってやろうとする義父に呆れ
(もうお金さえもらえればどうでもいいや、もう、この人たちと関わりたくない)
そう思って、それ以上追求するのはやめた。
もちろん私の両親も黙っちゃいなかったので、私としてはいつも口が達者で偉そうな彼が追い詰められているのを見られただけでもその場は気持ちがすっきりしていた。

正直私は、この男に新しい女がいようがいまいがどうでもいい。
これから先の人生、慰謝料と養育費を私と子どもに払い、どこかのタイミングで後悔すればいい。

彼にとっても最低であったであろう一日が終わり、結果的に離婚確定、親の力もあって私への十分な慰謝料と、子どもが20才になるまでの養育費の支払いを約束し、後日二人で公正証書を作成しに行った。
ついでに向こうの親の提案で、今後5年間は彼の結婚や女性との交際を認めないと言う約束もあったけど、まぁこんなのはどうでもいい。勝手にしろ。

そんなこんなで離婚の準備は着々と進んだが、各種手続きでバタバタしている最中、最後の最後で彼はこんなことを言った。

 「なんでこんなことになったんだろう」
 「離婚しない方法ってもうないのかな」

は?何その自己中発言。
典型的なダメ男だな。

あんたなんかいらない。
バイバイ。

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