第6回【「私、昨日まで○○と付き合ってたんですけど」】
手紙の出来事以来、彼は何を開き直ったのか
「疑われるのも嫌だし、一緒にいたくないから他に部屋借りるわ」
と言って夕食をうちで食べることを条件に他の部屋を借りてそっちで生活し始めた。
少しずつ冷静になりつつあった私は、全てを私のせいにして思い通りにしようとする彼の言動に苛立ちを感じつつも、離婚しないでいられるならもうどうでもいいやと思い始め、好きにさせた。
どう考えても別の女と一緒にいるための理由付けを私に擦りつけてるだけだったけど、当時はあえて事実を突き止めずわざわざ自分の心をえぐらないようにしていた。
そして私の「離婚はしたくない」という気持ちを逆転させたのは、彼の男友達からの一本の電話だった。
男友達:あ、奥さんですか?あいつからお前に奥さんあげるって言われてw
奥さん可愛いし、俺けっこう好きなタイプなんで。時間あったら今度二人で遊びませんか?w
私:‥‥は?‥いや、大丈夫です。
何かがぷつんと切れた。
(は???あげるって何?バカにすんのもいい加減にしろよ。そもそも私はお前の所有物じゃねーんだよ。)
類は友を呼ぶってこういうことだなと思うと同時に、あれほど執着していた結婚が急にどうでもいいものに感じた。
もしかしたら、男友達に多少なりとも自分の存在を認められたことで、足りていなかった何かが満たされたのかもしれない。(結局そこなのよw)それ以来、私は今までの自分が嘘のように、
(こんな男といたらこの子は幸せになれない。私がこの子を幸せにする。こんなやつ、いらない。)
そう思うようになった。
ただ、現実的に赤ちゃんを連れて一人で育てるのはまだ流石に自信がない。
経済的な余裕もない。
女がいることはもう確実だし、どうせなら証拠を集めて慰謝料と養育費をがっつり取って別れたい。
‥とはいえ、証拠集めって何からやればいいんだろ‥
友達にも協力してもらいながら試行錯誤していたとき、神様は私に味方してくれた。
『ピンポーン』
家のチャイムがなった。
インターフォン越しに見えたのは、同年代かちょっと歳下の可愛らしい女の子。
私:はい
女の子:あの‥○○さんの奥さんですよね?
私:そうですけど
女の子:あの‥私、昨日まで○○さんと付き合ってたんですけど、昨日急に別れようって言われて‥。それで、私ちょっと怪しいと思ってる女がいたのでその女の家調べたんですけど、今日彼その女の家にいて。奥さん、よかったら一緒にその女のところに行ってくれませんか?
え、、ええぇええええええええぇ
何これ、ドラマみたい、ドラマみたい!こんなことほんとにあるんだ!!!!!!
通常であれば修羅場の状況だったかもしれないが、私にとってはまるでその子が救世主に見えた。
(いや、色々ツッコミどころは満載なんだけど、とにかくその時はそう見えた)
だって不倫の証拠を探し始めたら、向こうから飛び込んできたわけよ!
こんなチャンス、神様がくれたとしか思えない!!!
私:‥‥い、、いこう!!!!!!
二つ返事でうなずいた私は、彼の「元カノ」である彼女が運転する赤い車の助手席に乗り、二人で「今カノ」の家に向かった。
移動中の車の中で、彼が彼女の母親に直接会って結婚前提で付き合っていると伝えていたこと、セールスレディのバイトをしていた彼女のためにいつの間にか高い保険の契約をしていたこと、私とは夜の営みは一切ないと言っていたこと(全然あったw)等々、クズの一言では片付けられないほどのたくさんの話を聞いた。私がどうこうと言うより、女をどれだけ舐めてるのかと、心底腹が立った。
もちろん、彼女が嘘をついている可能性もあるし、場合によっては私に危険が及ぶ可能性もあったが、彼女の様子はとても嘘をついているようには見えなかった。
私から見ても、明らかに憔悴し、どれだけ勇気を振り絞ってここにきたのだろうかと同情してしまうような状態だった。
彼女に「奥さんに殴られる覚悟できました」と言われたけど(まぁそうだよね)、すでに私にとっては救世主 笑
‥‥いや、その時はきっと、彼女と少し前の自分が重なって見えたんだと思う。
彼女を責める気には何だかなれなかった。