第19回【アンチイケメン】
そんな彼との関係が変化し始めたのは、新業務も安定し、サポートしてくれる部下たちとも打ち解け始めた頃。
あんまりお酒の強くない彼に、
「飲みにでも行こうかw」
なんてノリでふざけて誘ってみたら、予想に反して乗ってきたw
なんならみんなで行くのかなとか思ってたんだけど、彼はそもそも二人で行くつもりだったようで。
まぁ顔がタイプな相手と飲みに行くなんてこともめったにないし、それはそれでたまには仕事を忘れて楽しもう❤︎
なんて軽いテンションでこっそり二人で飲みに行った。
性格はいったん置いといて、
顔の好みがドンピシャの男と二人で飲んでる自分に酔うわ~
もう一生ないかもw
くらいに思っていたのだけど、思いのほか彼が好意的だったので(いやどう考えても下心だろw)、私もものすごく久しぶりに男性にドキドキを感じた。
(あ、ヤバイこの手のタイプ好きかも‥)
控えめなのにちょっと強引で男らしい彼を元彼と比較してしまったのもあるが、最初のデート?ですでにそんな感情を抱いてしまった。
それ以来、彼とはちょっとずつ距離が縮み、会社やまわりに内緒っていうドキドキ感の中、私たちの極秘社内恋愛は始まった。
(部下だしね)
過去にイケメンで最悪な思いをさせられて以来、男は顔で選ばないと心に誓ってきたが(そもそも顔が好きな人になんてめったに巡り合わないけど)、メンクイはメンクイ‥。
表面上、いくらアンチイケメンを装っていても、自分に嘘はつけないらしい。
男は中身だと豪語してきたというのに、これが本能ということか‥。
今考えると、彼に対する変な執着心は自分さえも騙していた『アンチイケメン』から、本来の『メンクイの私』を解放させた反動なんじゃないかとも思う‥たかが顔、されど顔‥
しかも彼がモテることも、私にとっては優越感なのだろう。
最初の旦那のとき同様、私の自己肯定感を高める材料にもなっているんだとも思う。
とはいえ、朝まで一緒に二人きりで遊ぶような女友達がいることも結婚願望が全くないことも、お互い恋愛対象と見る前の時点で話は聞いていた。
なので私も本気で好きになるのはやめようと早々に思っていた。
彼も自由を求めるタイプだし、それこそ今まで彼氏やダンナに縛られ続けてきた私にはこれくらいの軽い感じの彼氏がちょうどいいんじゃないかなとも。
‥なのに‥そのはずだったのに、彼は私の予想に反して、私の心を惹きつける悪魔の要素をじわじわと解放し始めた。