第4回【理由のわからない転勤】

彼への不信感を抱きつつも、まだ私は一度した結婚がそう簡単に崩れるものではないと思っていた。
きっと彼はこれから変わるのだろう、そうどこかで信じてた。

幸か不幸か、私の両親も親戚も、当時どんなに問題を抱えても「離婚」を選択する夫婦を見ることがなかったからかもしれない。
自分の人生に「離婚」の選択肢はなかった。

彼が口にするまでは。


元々同じ職場で働いていた彼は、私が出産で退職したあとは専門的な部署に引き抜かれ、相変わらず同僚や先輩・後輩に慕われ、頼られているようだった。
家での彼は別として、職場で頼られる彼は相変わらず自慢のダンナだったし、優越感もあった。

そんなある日、田舎の支店に転勤になったと彼から伝えられた。
引き抜かれた専門部署のない小さな支店だったので転勤理由を聞いたら、
「そっち今人足りないらしいから。」
‥‥まぁそんな事もあるのかな、と私も深く考えず受け入れた。

一緒に引っ越しをすることも考えたが、まだ数ヶ月の赤ちゃんを連れて引っ越しするのは大変で、離れて住む彼や私の両親とも相談し定期検診が落ち着くまでは単身赴任にしようと決めた。

単身赴任が始まってからは、私もワンオペ育児で目まぐるしい毎日を過ごし彼のところに行く余裕もなく、彼も月一回帰ってくるかこないかだった。

数ヶ月後、そろそろ私も赴任先へ引っ越し一緒に暮らそうという話を進めていたときのこと。
彼が私に言った言葉は衝撃的なものだった。

彼:もう別れたい
私:‥え?

‥何を言っているんだろう。この数ヶ月、ひとりで育児をして、家事をして、確かに忙しく過ごしていたけれど、ちゃんと奥さんとしての役割も忘れていなかったはず。気遣いも忘れていなかったはず。

私:何言ってるの?ちょっと意味わかんない。子どももいるのに私別れるつもりないよ
彼:嫌いになったわけじゃないけど、もう女として見れない
私:‥何それ

ショックだった。私の描く人生の中に「離婚」の文字はない。

しかも女として見れないって何?どう言うこと?そりゃ出産後は夜の営みの回数は減ったし、女と言うより母としての毎日を過ごしてるよ。
でも、それってみんなそうなんじゃないの?
私の何が悪かったの‥?
そんなことを考えていたとき、

彼:あ、別に女がいるとかじゃないからね?
私:(‥女?そんなの全く疑ってもいなかったけど。)

思い出すほどバカな男だなと思う笑
当時の私はそれこそバカがつくほど純粋だったので、「離婚」だけでなく「浮気」の文字も浮かんでいなかった。
が、彼のその言葉で初めて「女」の存在を意識した。

とはいえ、最初は信じたくなかった。現時点では彼がうっかり「女」と口に出しただけでなんの証拠もない。
でも、今までの彼の行動を振り返ると確かに女を感じさせる行動はあった。
私が疑っていなかっただけで‥。

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